弊所の坪内弁護士と佐藤香奈子(精神保健福祉士・社会福祉士)が協働して刑事事件を対応し、本年3月15日に再度の執行猶予判決を獲得しました。
事案は、70代の高齢者による万引きです。依頼人は、事件の半年前に万引きで執行猶予判決を得たばかりであり、万引き当時は執行猶予期間中でした。執行猶予期間中にまた犯罪を犯すと、執行猶予が取り消されて、今回の罪と併せて刑務所に行く可能性が高くなります(刑法26条以下)。
そのため、この事案では原則として実刑が想定されており、厳しい要件である再度の執行猶予判決を獲得しない限り、刑務所で服役しなければなりません。再度の執行猶予判決を得ることは、無罪を獲得するのと同じくらい難しいと言われています。
そこで、依頼人から依頼を受けた坪内が「万引きをした理由が説明できない」という依頼人の言葉をきっかけに身元引受人の協力を得て精神科に受診したところ、「認知症の疑い」という診断がでました。確定診断ではないものの、この診断が再度の執行猶予判決を取ることのできた一つの理由です。
このような診断を経て、弊所では佐藤が更生支援計画を構築しつつ、関係機関を調整し、依頼人を取り巻く環境の調整を行いました。そして、病院とともに、地域包括支援センターの協力を得て、盤石な支援体制を築くことができました。
このような弁護士とソーシャルワーカー協同により、再度の執行猶予判決を獲得し、依頼人は保護観察下におかれるものの、老後の生活を無事送ることができるようになりました。判決では、「・・・社会福祉士の関与の下、デイサービスなどの福祉的な支援体制を利用できるようになっており、被告人を監護・監督する体制も整いつつある。以上によれば、本件は、例外的に刑罰よりも治療を優先することが許される事案であって、情状に特に酌量すべきものがあると認められる・・・」という文もあり、ソーシャルワーカーの活動を評価していただいております。
「ケースに法の力を」という弊所理念を体現した結果となりました。